地球の大気中には多くの水蒸気が含まれている。遷音速で航行する航空機の翼周りには垂直衝撃波が発生するが、特に日本のような高湿度環境下を航行する場合には、その流れがいままで知られていた流れとは極めて異なることがわかってきた。航空機が離陸後、雲の中を通ると不安定振動を起こすが、これは大気中の水蒸気が翼面上ならびに後流域で凝縮を起こし、流れを不安定にしている可能性がある。本研究室では、非平衡凝縮を考慮した相変化を伴う気液二相流の計算コードを開発し、高湿度環境における3次元遷音速翼周りの流れを計算している。翼の周りには湿度の増加に伴い水蒸気が凝縮を起こし水滴が発生する。これが飛行機雲となる。また、水滴が発生することにより、揚抗力比は減少し翼性能が低下することがわかった(計算結果1,2)。
さらに大気環境中に浮遊する微小粒子が凝縮現象にどのような影響を与えるかを検証するために、高湿度の大気環境中における二次元翼ならびに三次元デルタ翼周りの凝縮流れを計算した。微小粒子が凝縮液滴の核となることにより、風洞実験において支配的である均一核生成とは明らかに異なる凝縮が発生することが計算により明らかになった。このことは、風洞実験において航空機周りに発生する凝縮現象を正確に評価することができないことを示唆している(計算結果1,2)
発表論文
入屋明広, 山本 悟, 大宮司 久明, 湿度を考慮した遷音速粘性流れの数値解法, 日本機械学会論文集B編, 62-603(1996-11), 3854-3859.
Hideki HAGARI and Satoru YAMAMOTO, Numerical Investigation of Condensation Effect to Unsteady Transonic Viscous Flows in Moist Air, Proceedings of International Conference on Fluid Engineering, JSME Centennial Grand Congress, III (1997-7), 1701-1706.
S.Yamamoto and H. Hagari, Numerical Investigation of Nonequilibrium Condensation Effect around 3-D Transonic Wing in Moist Air, Proceedings of 16th International Conference on Numerical Methods in Fluid Dynamics, Lecture Notes in Physics, 515(1998), 554-559, Springer.
山本 悟, 葉狩秀樹, 村山 光宏, 飛行機雲の数値シミュレーション, 日本航空宇宙学会論文,47-540(1999),41-46, also, Satoru Yamamoto, Hideki Hagari and Mitsuhiro Murayama, Numerical Simulation of Condensation around the 3-D Wing, Transactions of the Japan Society for Aeronautical and Space Sciences, 42-138(2000).
Satoru Yamamoto, Onset of Condensation in Vortical Flow over Sharp-edged Delta Wing, AIAA Paper 2001-2651, (2001), also in AIAA Journal, 41-9(2003), 1832-1835.
佐藤大悟, 山本悟, 大気環境中における遷音速翼周り流れの数値シミュレーション, 日本機械学会論文集B編, 68-671(2002).
Yasuhiro SASAO and Satoru YAMAMOTO, Numerical Prediction of Humid Effect to Transonic Flows in Turbomachinery, Proceedings of International Gas Turbine Congress 2003 Tokyo, (2003), CD-ROM.