超臨界流体シミュレータ(SFS)

 ゼロエミッションで環境にやさしく、広範囲の熱源が利用できる超臨界CO発電技術が注目されている。作動流体はCOであり、臨界点近傍ではわずかな圧力と温度の変化でも密度が急激に変化することから、これを利用したBraytonサイクルによる発電が想定されている。重ねて臨界点の温度と圧力が、それぞれ304.2K, 7.38MPaで常温に近い状態で超臨界流体になることから、低熱源による発電も可能とされている。実用化まではまだしばらくかかる状況にあるものの、現在すでに世界中の研究機関や発電機械メーカーがその開発に取り組んでいる。超臨界状態は高圧環境であることから、実験的手法による研究開発には限界がありシミュレーション技術への期待も高まっている。超臨界流体は理想気体と異なり熱物性が非線形に変化することから、これまで開発してきた理想気体に基づく数値流体力学(CFD)手法は使えない。

 一般的な物質は、気体・液体そして固体の三つの相からなり、場の圧力や温度によって、それらの相間で相変化する。さらに、高圧・高温(場合によっては常温)の状態にすると、第4の相として、超臨界流体になる。特に臨界点近傍においては、特異な熱物性が現れることが知られている。我々の研究室では、これまでに、前処理法に基づく数値解法と、熱物性データベースPROPATHやREFPROPを完全にリンクさせることにより、任意物質の任意の圧力・温度条件における流動現象が数値計算できる「超臨界流体シミュレータ」(Supercritical Fluids Simulator, 略してSFS)を開発してきた。SFSは、二酸化炭素、水のみならず、熱物性データベースに定義されている物質、たとえば、窒素、酸素、メタン、アンモニア、水素、ヘリウム、アルゴンなど、様々な物質の熱流動解析が可能である。さらに、これらは、超臨界状態のみならず、常温・常圧、極低温環境条件でも計算できる。これまでに、超臨界水、超臨界二酸化炭素、超臨界オクタンの熱流動にSFSを応用している。

関連した最近の主要論文、解説、著書

  1. Shuto Yatsuyanagi, Takashi Furusawa, Hironori Miyazawa, Satoru Yamamoto, Takuo Onodera, Sadatake Tomioka, Numerical Study of Supercritical Octane Flow with Multicomponent Effects by Pyrplysis, International Journal of Thermal Sciences, 171, (2022), 107103. https://doi.org/10.1016/j.ijthermalsci.2021.107193
  2. 山本悟,古澤卓,非平衡凝縮を伴うマルチフィジックス熱流動のシミュレーション技術,特集「マルチフィジックスシミュレーションの進展」,日本ガスタービン学会誌,47-6, (2019), 389-395.
  3. Satoru Yamamoto and Takashi Furusawa, Chapter 13 Mathematical Modelling and Computation for Rapid Expansion of Supercritical Solutions, Supercritical and Other High-pressure Solvent Systems ( ed. by Thomas M. Attard and Andrew J. Hunt), Royal Society of Chemistry, (Aug.2018). https://doi.org/10.1039/9781788013543-FP001
  4. Takashi Furusawa and Satoru Yamamoto, Mathematical Modeling and Computation of High-pressure Steam Condensation in a Transonic Flow, Journal of Fluid Science and Technology, 12-1 (2017), 1-11.https://doi.org/10.1299/jfst.2017jfst0002
  5. Satoru Yamamoto and Takashi Furusawa, Thermophysical Flow Simulations of Rapid Expansion of Supercritical Solutions (RESS), Journal of Supercritical Fluids, 97(2015), 192-201. (Featured online on ‘Advances in Engineering’:https://advanceseng.com/general-engineering/thermophysical-flow-simulations-of-rapid-expansion-of-supercritical-solutions-ress/)
  6. Satoru Yamamoto, Takashi Furusawa, and Ryo Matsuzawa, Numerical Simulation of Supercritical Carbon Dioxide Flows across Critical Point, International Journal of Heat and Mass Transfer, 54-4 (2011), 774-782.https://doi.org/10.1016/j.ijheatmasstransfer.2010.10.030